文献・過去の調査からみる
当地域の植生
河川(南東部の鮫川)沿いの植生
●「いわき植物誌」(2014)では、吉岡(1954)が区分した、福島県の6森林区分のうち、沿岸部の「シイ・カシ林区」について説明されています。その中で、「カシ林の構成樹種であるアカガシ、ウラジロガシ、シラカシは、スダジイより耐寒性があり、内陸部まで分布し、いわき市の御斉所渓谷を超え、古殿町まで分布している」と述べられています。
●「福島県第3回自然環境保全基礎調査の植生調査報告書」(1988)では、標高240mの鮫川沿いの森林で調査が行われています。
調査票によると、「斜面下部ではアカガシ、ウラジロガシなどの暖地生植物がみられ、その林床にシキミ、ヤブコウジ、マメヅタが多い。周辺の崖堆の多いところにはケヤキ林が発達し、尾根に近づくに従いイヌシデが多くなる。林床植生は下部から尾根に近づくに従い、暖地性の植物から温帯性植物に移行していく」と記録されています。
植生調査票「御斉所のケヤキ林」

※「福島県第3回自然環境保全基礎調査の植生調査報告書」(1988)の
御斉所のケヤキ林調査票を参考に作成
高標高地(三株山・芝山)の植生
●古殿町史(1970)によると、1970年6月に、植物を調べる踏査が行われています。
その中には、芝山(819m)と三株山(840m)の植生が記載されています。
三株山…下部:カシワの自生地
頂上付近:ヤマナラシ、一面のミズナラ林、ウリハダカエデ、オオウラジロノキ
南麓:トチノキ、エンレイソウ
滝ノ平:イヌブナ、コバイケイソウ
芝山 …麓:カシワの群生
頂上付近:アズマギク、ウスユキソウ、ノコギリソウ、ノリウツギ、ハウチワカエデ
低山地・深山の植生
●古殿町史(1970)には、低山や奥山の植生についても記載されています。
熊倉(370m)…ミヤマイラクサ、フタバアオイ、ウリノキ、ハナイカダ、マツブサ
高房(410m)…チドリノキ、ヒメウツギ、トチノキの大木群生、メグスリノキ、カツラの大木
竹貫田(540m)…バイカツツジ、アブラツツジ、ヤマトリカブト、タマアジサイ
矢野山(608m)…ハルトラノオ、タマブキ、ウワバミソウ、ウバユリ
古殿町史(1970)の踏査地
